社会と成長
企業が利益を確保しながら長年にわたり成長し続けるのは、相当に難しいことです。しかしながら、現状維持ではいつしかジリ貧に陥り、社会で生き残っていけないと、経営者なら誰もが知っています。
基本的に、経営者が目指す成長の中身はそれぞれ違うものです。利益の拡大なのか、従業員の増加なのか、それともシェアの増大なのか……。
日本企業の経営課題
日本能率協会は、「日本企業の経営課題2023」を公表しています。図は「現在の経営課題」を聞いた質問に対する回答のトップ5を提示したものです。
挙がっている項目は、「人材の強化」「収益性向上」「売り上げ・シェア拡大」など会社の成長に関わるものばかりです。
しかし、その成長を急ぐあまり、会社の良さが失われてしまうことはないのでしょうか。
思い切った変革の内容
成長を目指して変革を起こす際、よくあるのが①出店ペースのスピードアップ②事業展開エリアの拡大③直営からフランチャイズといった経営形態の変更です。とある地方都市で地域密着型のファストフード店を展開し成功していたA社は、2代目の経営者に変わった途端、この三つをすべて大幅に変更しました。出店ペースを急速に上げ、店舗展開エリアも拡大。さらに直営店からフランチャイズへの転換といった具合です。
これは、さらなる成長を狙う思いきった施策でした。
変革のポイント
その思いきった施策の結果、A社の勢いは失速していきました。なぜなら、大胆な方針転換によってA社の最大の強みであった「地域との絆」を失ってしまったからです。これまでは地域密着の店舗だったからこそ、地元の新鮮な食材でおいしい料理を提供できました。
また、緩やかな出店ペースをキープすることで従業員の教育にもしっかり時間をかけ、円滑なオペレーションを実現していましたし、何より地元の人たちから愛されていました。それが成長を焦ったばかりに、新鮮な地元食材の調達や円滑な店舗運営、地域住民とのフレンドリーな交流のすべてが不可能になってしまったのです。
もちろん、企業にとって成長は欠かせません。しかし、成長に向けて変革を起こす際、今ある自社の強みを守り抜けるかどうかの視点は忘れないで下さい。